それぽっちり物語〜石見銀山昔話伝説集(大崎雪枝著)


 世界遺産に登録された石見銀山で、古くから言い伝えられていたお話を、書家の大崎雪枝さんという方が聞き書きでまとめたお話です。部数が少なく絶版になっていたものを、中村ブレイスが再版として発行した本です。

 石見銀山には、最盛期にはたしか20万人もの人が暮らしたと言います。シルバーラッシュは、世界の銀の流通量の三分の一を占めたと言われていますね。

 そんな石見銀山の有名な五百羅漢や、有名な芋代官の話などは有名ですが、身近な人々が主人公の怪談話などが面白く書かれています。「カワウソの恩返し」などは、二段落ち、とでもいいましょうか、いかにもありそうなお話が楽しめます。

 島根には、石見銀山に限らず、地域に語り継がれた昔話があって、そこには、地域で暮らす知恵、前例、しきたり、タブーなどが全て盛り込まれ、かたりつがれてきたのでしょうね。過疎、高齢化の波はいかんともしがたい石見地方ですが、こうした文章を再版して残しておこうというこの考え方が中村ブレイスの社長さんの卓見です。

(1976年、中村ブレイス発行)