2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ローカル鉄道という希望(田中輝美著)

島根を拠点に活動するローカルジャーナリストの著者が、全国のJRではないローカル鉄道を取材した連載記事をもとに、加筆してバージョンアップした本です。ローカル鉄道というと、利用者が減って、ひいひい言っているというイメージですが、実は、最近は底…

漫画で描く日本の祭り旅日記(平野勲著)

出雲市出身の漫画家による、日本全国の祭りの風景を描いた漫画の集大成です。毎日新聞島根版に掲載された漫画と文章が収められています。青森県三沢市に暮らしておられたということもあり、東北のお祭りの風景が数多くあり、印象に残ります。「ふるさと」を…

山陰の美術家たち(山本晴男著)

著者は山陰放送の報道記者を務める傍らで、山陰の美術について取材を続けた方だそうでして、山陰両県の画家たちを中心に網羅しようとしたものです。島根は橋本明治や園山俊二から、雪舟まで時代も洋式も幅広く取り上げています。個人的には石橋和訓や中原芳…

伝説の地方紙石見タイムズ〜山陰の小都市浜田のもうひとつの戦後史(吉田豊明著)

浜田で戦後に発行された新聞「石見タイムス」の興亡を描いています。昭和22年から47年まで発行された新聞です。小さな町で、新聞を出していくというのは大変なことだったと思います。でも、あの戦争がやはり、市民の中に言論の自由が失われたことが原因…

漫画で描くふるさとの祭り(平野勲著)

出雲市出身の漫画家である著者が、島根県内の祭りに出掛けて祭りの様子を描きました。その数なんと133も載っています。島根県内にこんなに祭りがあるのかというほどです。しかも、その祭りがみんなにぎやかで、人がものすごく集まっていて、その一人一人…

ケンといわみかぐら(寺戸恒晴作・絵)

舞台は海沿いにある石見の漁村でしょうか。石見神楽のお面を作る家に生まれたケンは、面を作る職人なるのをいやがっているのですが、親戚の兄ちゃんが、父親の神楽面のつけた親戚のお兄ちゃんが、夜通しの神楽を舞うのを見て感動し、面づくりを志すというス…

銀山社会の解明(仲野義史著)

著者は石見銀山資料館の館長さんで、熱心な銀山の研究者。近世(江戸時代の銀山社会がどうなっていたのかを、古文書などの資料を丹念に読み込み、江戸時代の銀山運営を明らかにしていきます。山あいの大森の地域にどのように人が集まり、銀山から得られる仕…

島根郷土史ノート(藤岡大拙著)

島根の語り部、藤岡大拙氏が、島根県立図書館の職員として務めておられた時代に、島根新聞(山陰中央新報の前身)に寄稿された、島根県の郷土史に関する論考や随筆的な雑感などを集めて、出版されたものです。読み進めていくと、藤岡氏が教員時代から、ずっ…

石見の民謡(西岡光夫、酒井董美著)

石見の民謡とは、山がちで厳しい生活を強いられる地域の労働歌だ。田植え、木挽き、炭焼き、たたらなど、仕事のときに、口ずさみ、つらい労働を乗り切ろうという庶民の知恵だ。ときにもの悲しく、一方で、笑い飛ばそうという痛快さも併せ持つ。麦つき、臼ひ…

名将山中鹿之助(南原幹雄著)

「我に七難八苦を与えたまえ」という有名なせりふでしられる山中鹿之助。毛利に滅ぼされた尼子家の再興を目指して、各地を転戦して、一時的にせよ家の再興を果たした勇猛ぶりと、忠義の心が、今も人々の心を捕らえてやみません。ただ、この「忠義」を悪用し…

名将山中鹿之助(南原幹雄著)

「我に七難八苦を与えたまえ」という有名なせりふでしられる山中鹿之助。毛利に滅ぼされた尼子家の再興を目指して、各地を転戦して、一時的にせよ家の再興を果たした勇猛ぶりと、忠義の心が、今も人々の心を捕らえてやみません。ただ、この「忠義」を悪用し…

須佐之男の原像

第10回歴史浪漫文学賞研究部門優秀賞を受賞した作品です。横浜の郷土史などで著作もある著者が、考古学資料など文献を元にスサノオの本質に迫るという内容です。著者はスサノオが、高天原で暴虐の神として疎まれ、追放されたりしているのがかわいそうでな…

山里からの伝言─中国山地2010〜2012

著者は、中国新聞記者で、ルポ「新中国山地」のスタッフ。あれから20数年が経過したころ、益田市匹見町を舞台に、中山間地域の記録として連載されました。さすがの内容ですね。匹見の人口流出がなぜ起こったのか、過疎が進んだ後、さらにバブルとバブル崩…

山陰を旅する人たち(上村武男著)

若狭の国から長門まで、広い山陰地方を東から旅しながら、その地の出身の作家たちを取り上げて紹介しています。山陰という風土が、作家としての精神性にどのように影響しているのか、考えさせられます。島根からは、石見益田の田畑修一郎、安来の河井寛次郎…

日本の心(小泉八雲著)

小泉八雲の文章は、明治時代の日本人の物の感じ方、考え方、その考え方の背景にある死者が積み重ねてきたものなどを、なぜにこんなに的確につかむことができるのか、いつもその文章を読むと不思議な感じがします。この本も、日本人の本質に語りかけるような…

なるほど伊勢神宮と出雲大社のすべて(三橋健監修)

2013年は、20年に1回の行う伊勢神宮と、60年に1回の出雲大社で遷宮が同時に行われた年でした。伊勢神宮と出雲大社は、大和政権と出雲古代勢力をそれぞれ象徴する存在として、古くから日本人の信仰を集めてきました。ただ、その二つの神社が本当は…

しまねっこにゃ(寺下のぞみ著)

島根県観光キャラクターで、全国ゆるキャラグランプリで、10位内をキープしている、そこそこかわいいしまねっこの写真集です。確かにかわいいけれども、面白い企画だけれども、なんといいましょうか、面白い本ですね。これがかなり売れているということで…

民話に魅せられて(酒井董美著)

山陰民俗学会会長を務める、著者は、松江市出身で、中学・高校などで教師を務めた後、島根大法文学部教授となりました。その間、山陰地方を中心に民話や民謡などを採録し、その記録保存に多大な貢献をされました。その著者がどのようにして民話に魅せられて…

ホーランエンヤ(野津龍著)

鳥取大学名誉教授の著者が、ほ2009年に行われる松江のホーランエンヤを前に、その前2回開かれた神事を紹介する写真集です。12年に1回、松江の大橋川を舞台に開かれる日本三大船神事の全容が分かり、迫力ある写真も見物です。ホーランエンヤは、松江城…

川の中の飛行場(槇原告則・岡実智子(編著)

出雲市斐川町に「新川」という地名があって、今も長細い広大な空き地があるのを知っている人も多いでしょう。あれは、新川飛行場といって、戦前には日本軍の飛行場がありました。しかもその前は川だった、そう「新川」です。そして、その川は、氾濫する斐伊…

過疎町長奮戦記(大谷武嘉著)

著者は、昭和30年代に匹見町長を務めた名物町長です。匹見はなんと言っても「過疎」という言葉が生まれた町と言われています。林業などで人々がたくさん住んでいた匹見は、高度経済成長が始まった30年代に人口流出が始まり、人口が激減。「挙家離村」と…

日本石巡礼(須田郡司著)

巨石ハンターを名乗る著者は、出雲市大社町の出雲大社のすぐ近くに住んで折られて、おくさまが「まないな」というおしゃれなカフェもやっておられます。出雲大社の近くで過ごしたいと言うことで、移住されてきたそうです。その巨石ハンター世界を股にかけて…

石見銀山叢話(山根俊久編)

石見銀山が世界遺産になるずっと前、だんだん廃れていく大森の町の歴史を書きためておきたいという編者ら研究者たちが、集まって作った本です。こういう歴史をつなぐ仕事は出版の醍醐味ですね〜。著者が戦前の1931年に「石見銀山に関する研究」という冊…

日本のシジミ漁業 その現状と問題点(中村幹雄編著)

シジミと言えば、宍道湖ですが、海水と淡水が入り交じるシジミの生息環境そのものが、環境の絶妙なバランスを象徴していると思います。著者は、県内水面試験場の場長さんで、宍道湖の現場をずっと見てこられた方で、全国の汽水域の研究者の研究を網羅する形…

尼子・大内・毛利六十年史(吉村雅雄著)

中国地方の戦国時代を年代順に追っていくと、その覇者は、タイトルの順番になるということですね。山陰の地から、中国地方制覇の野望に近づいた尼子。広瀬の月山富田城が中国地方をにらんでいた図を思い浮かべると、島根人としてはワクワクします(でも、戦…

島根の詩人たち(田村のり子著)

島根県内の詩壇というものについて、認識がなかったのが、恥ずかしいくらい、島根の詩人たちの生き生きとした姿が、この本には描かれています。大社町の旧制杵築中学校の生徒たちが、ガリ版刷りで印刷した詩の同人誌「平原」が編まれたのが大正七年という。…

ニューオーリンズとラフカディオ・ハーン(島根大学付属図書館、ハー

ハーンが日本に来る前に過ごしたニューオーリンズ時代にスポットを当てた本ですが、内容も充実、ハーンの好きな方には、ぜひ蔵書に加えて頂きたい本ですね。ニューオーリンズでハーンは新聞記者をしていました。その記事も掲載されていて、これも、ハーンの…

津和野の誇る人びと(岩谷建三著)

津和野藩は人材を輩出したことで有名です。江戸末期の日本を代表する思想家・西周、文豪・森鷗外は有名ですが、ほかにも、初代札幌市長を務めた高岡直吉と熊吉の兄弟も、地元の駅前に「高岡通り」があるくらいです。女優の伊藤蘭奢(らんじゃ)も、名作「マ…

津和野藩(沖本常吉著)

1902年に津和野に生まれた著者は、東京日日新聞を退職後、郷里に帰り、地方紙研究に取り組んだ方で、「日原町史」の執筆で柳田国男賞をもらったそうです。地道な地方史研究の成果ですね。この津和野藩という本は、津和野歴史シリーズ刊行会という団体に…

地方文化のカルテ〜あるジャーナリストの戦後史(信太澄夫著)

山陰文化シリーズが続きますが、今回は44番目。朝日新聞の記者を務めた後、島根のお隣の日本海新聞の編集局長を務めたり、山陰放送の役員を務めたりして、松江にもいたそうです。そういうことで島根本の一つ。優れたジャーナリストというのは、腹の据わっ…