2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

山陰〜歴史と文学の旅(宮崎修二朗著)

大阪に本社を持つ出版社の保育社がつくった、モノクロが多い「カラーブックス」シリーズで、山陰を取り上げた本がありまして、その名も「山陰」です。 山陰といっても、但馬地域も含めて、あります。もちろん「城の崎にて」の城崎温泉などが有名ですね。そこ…

僕の見た「大日本帝国」〜教わらなかった歴史と出会う旅(西牟田靖著)

戦前の国土は異様に広かった。このことを今思うと、それは、あまりにも日本の、あるいは、日本人の身の丈を超えた大きさに見える。ただ、当時は大日本帝国はそんなことをおもってはいなくて、日本の優れた文化を押しつけることが、被支配石の幸せだと思って…

五峰の鷹(安部龍太郎著)

「等伯」で直木賞を受賞した安部龍太郎が石見銀山を舞台した小説「五峰の鷹」。銀を巡る権力闘争と冒険譚ですが、戦国時代には正しいかどうかではなく、強いか、知恵があるか、勇気があるか、という人間の力の争いだということがよく描かれていて、戦国時代…

それぽっちり物語〜石見銀山昔話伝説集(大崎雪枝著)

世界遺産に登録された石見銀山で、古くから言い伝えられていたお話を、書家の大崎雪枝さんという方が聞き書きでまとめたお話です。部数が少なく絶版になっていたものを、中村ブレイスが再版として発行した本です。 石見銀山には、最盛期にはたしか20万人も…

出雲の山々とその周辺の山(島根県勤労者山岳連盟著)

湖鹿堂は鹿でありながら、山登りはしません。祖父から「決して登山はしてはいけない」と言われていますので。 それでも島根の山々には興味がありますね。中国山地で育った私には、山は登山の対象と言うよりも生活の場であり、山の恵みをいただく場所でありま…

文学アルバム 小泉八雲(小泉時、小泉凡共編)

共編者となっているのは、小泉時さんは、小泉八雲の長男の一雄氏の長男なので小泉八雲の直系の孫、凡さんは時さんの長男ですから小泉八雲の直系の曾孫ですね。小泉八雲がギリシャで生まれ、アイルランドで育ち、米国に渡り、記者として活躍したことや、その…

中国山地(上下、中国新聞社著)

この「中国山地」は、過疎化が急激に進み、くらしや文化が急速に失われつつある1960年代に、中山間地域のくらしを克明に記録した伝説的なルポとして有名です。今でも中山間地域を研究する人のバイブル的な存在で、古書価もかなり高めです。これは二度ほ…

松江 堀川めぐり(中国新聞著)

晴れて国宝になった松江城は、観光客も増えて、よかった良かった。 この本は、1997年から運行を開始した堀川遊覧船について、堀川の歴史やその魅力、堀川にかかる亀田橋やヘルンの小径、内中原町にあった志賀直哉の堀端の家など、連載をまとめた本です。…

石神さんを訪ねて(山陰中央新報社)

山陰中央新報で連載された企画を一冊の本にまとめたものです。出雲地方にある50カ所の「石神さん」を紹介しています。 石神さんは、大きな岩が地域の人々の依り代として信仰されてきたものです。その信仰形態はさまざまで、スサノオノミコトやオオクニヌシ…

ジャパングラフ 島根

この本をみたとき、ああ、やられたな、と思ったものです。「くらしの中にある47の日本」。キャッチコピーもいい。そのなかで、5番目に島根を選ぶセンスがまたいい。ちなみに、1〜4は、滋賀県、岩手県、愛媛県、群馬県。うん、いい。 登場人物が、また、…

湖鹿堂が「古本の冬營舎」を占拠!湖鹿堂2DAYS!

2016年1月30、31日は、松江市西茶町の古本の冬營舎を湖鹿堂が2日間乗っ取ります。この2日間は、これまで一箱古本市専業だった湖鹿堂が持っている本を冬營舎の棚に大量に並べます!私が店主も務めます! 島根の本、旅の本、本の本、思想など、幅広…

森鷗外百話(苦木虎雄著)

津和野町に生まれた森鷗外の人生を、順に追った100話完結の文章で、山陰中央新報に連載されたものを、同社の「ふるさと文庫」シリーズとしてまとめて出版された本です。 森鷗外の研究をするひとはむちゃくちゃ多いですが、地元でもその魅力から、研究対象…

石見の文学(山崎克彦著)

数々の石見の文芸活動について著作を持つ山崎克彦氏が、石見出身の文学者について、エッセイ風にまとめた本です。冊子のような体裁ですが、中身は濃いです。 まず、石見の三大文学者として、「森鷗外、島村抱月、中村吉蔵」の3人を挙げて、この3人が交流が…

民藝の教科書1うつわ(久野恵一監修、荻原健太郎著)

島根県は民藝の聖地なのではないでしょうか。ちょっと大げさかもしれませんが、この「民藝の教科書 うつわ」を読んでいると、そんな気分にさせられます。 民芸運動は、柳宗悦、浜田庄司、河井寛次郎を中心に展開しました。生活に根ざした器の中にこそ美しさ…

出雲・石見(田畑修一郎著)

著者は益田市出身の作家で、戦前、芥川賞候補にもなりました。若くして亡くなったのが残念ですが、郷土の作家として、もう少し名が売れても良いかなと思います。 出雲・石見は、安来から郷里の益田まで海岸線にそって、じっくりと1ヶ月かけて旅したエッセイ…

ほんほん本の旅あるき(南陀楼綾繁著)

著者の南陀楼綾繁さんは、出雲市の出身です。フリーの編集者・ライターとして活躍する一方で、全国に広がっている「一箱古本市」の考案者でもあります。すごい人なんです。 一箱古本市は、本のフリーマーケットを想像してください。でも、本を売る広さという…

風が強く吹いている(三浦しをん著)

三浦しをんさんの小説は、どれも面白くて、思わず一気読みしてしまうのですが、この風が強く吹いているも、徹夜必至のスポーツ&青春小説です! けがのために実力がありながら、箱根駅伝とは無縁の生活を送っていた主人公のハイジだが、天才ランナーのカケル…

胸の小箱(浜田真理子著)

松江を拠点にしながら、全国に活動の輪を広げている歌手の浜田真理子さんが、歌うたいとして生きていくことを決めた半生をつづったエッセイです。子供時に、スナックを経営する親と妹たちとの間に挟まれて、寂しいと言えずに我慢し続けた日々、歌唄いとして…

出雲和紙〜人と風土(文・漢東種一郎、写真・井上喜弘)

著者の漢東種一郎さんは、松江市収入役を務めた後、随筆など各種の著作を残された知識人です。この漢東種一郎さんの本は、歴史的な深みと共に、自然や風物さらに、人々の生活に根ざした空気感を伝える文章が素敵で、今でも松江の人たちに愛されている人です。…

蝶が飛ぶ葉っぱが飛ぶ(河井寛次郎著)

著者の河井寛次郎は、柳宗悦らとともに、日本の民芸運動を起こした人です。1890年、安来市の生まれで、松江中学から、東京工業専門学校(現東京工業大学)窯業科に進みました。同校の後輩だった浜田庄司と出会い、全国の窯を一緒に回ったりしました。河…

島根県謎解き散歩(藤岡大拙、瀧音能之編著)

島根の雑学をまとめた一冊です。編者は、出雲のことならこの人と誰もが認める藤岡大拙さんと、出雲神話や古代史に詳しい瀧音能之さんです まあ、この本を読んで、島根県というところは、古代からの神話や伝説などが、そのまんま伝わっていて、誰かが、「京都…

読書画録(安野光雅著)

島根県津和野町の画家、安野光雅さんが、日本の名作を取り上げ、その舞台となった場所を描いた水彩画と、その小説についてのエッセイをまとめた本です。36人は、森鷗外、夏目漱石、幸田文、樋口一葉、山本周五郎、川端康成、北原白秋ら、明治から昭和にか…

ゆるゆると。〜まつえで暮らす〜(すやまひろこ著)

松江城のそばの北堀町の古民家で、手作り雑貨の店「ちろり」を開いておられる、すやまひろこさんが、松江の素敵な場所や過ごし方について、リポートしてまとめた本です。そんじょそこらのガイド本と違って、松江のしっとりした風情のある場所や、手作りでこ…

花森安治伝(津野海太郎著)

「暮しの手帖」の昭代編集長、花森安治と島根ってどうつながるかっていうと、神戸市出身の花森が、その後、旧制松江中学で3年間松江で過ごしたことですね〜。なので、花森安治さんも「島根関連」という位置づけであつかわせていただきます。 神戸市出身の花…

街道をゆく 7 甲賀と伊賀のみち、砂鉄のみちほか(司馬遼太郎著)

大作家・司馬遼太郎さんの紀行文の集大成であるところの「街道をゆく」シリーズは、旅に行くときにその土地のことを知るために、読んでから行くと、その土地の歴史、風土、文化、人々の性向などが分かります。まっさらな状態で旅に行くのも素敵ですが、司馬…

島根の地名辞典―あなたのまちの地名考(白石 昭臣著)

「六十の逆落とし」 津和野町直地の東端に、青野山麓に連なる奥山にある地名。周辺に人家はなく、昔、六十歳になったら老人を捨てたところと伝え、地名はこれに由来すると言われている。 このような話は、日本中いくらでもあるのでしょうが、すごく具体的で…

渾身(川上健一著)

はっきり言って、これは泣けます。最初にこの小説を読んだときには、ほぼ後半半分はずっと泣きっぱなしでした。島根県に縁のある人には必読の小説と言えるでしょう。島根県ということを除いても、結構本を読んで泣いてきた湖鹿堂にとっても、三大泣ける小説…

ことば・把手・旅(天野祐吉、安野光雅著)

安野光雅さんは、島根県津和野町出身の画家です。ソフトなタッチの優しい絵は、見る人の心をいやしてくれます。また順次、楽しい絵本を紹介したいと思いますが、ここで取り上げる本は、コラムニストで広告批評の主宰者として活躍された天野祐吉さんとの対談…

阿須那史考(三上巌著、阿須那公民館発行)

島根県邑智郡にある「阿須那」と言っても分からない人が多いかもしれません。「次の日祭り」という祭りがあって傘鉾という出し物が練り歩くので有名です!それでも分からない?池月という名馬の伝説があって、そこには、「池月酒造」というのがありまして、…

手仕事の日本(柳宗悦著、岩波文庫、1985年刊)

「民藝(みんげい)」という言葉を生み出したのは、柳宗悦です。生活の中で使われてきた道具に「美しさ」があるということを見つけた、と言われています。いまでは、実用の美というのはかなり意識されていますが、柳宗悦が民芸ということを言うまで、日本人…