2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

原風景のなかへ(安野光雅著)

島根県津和野町出身の画家の著者が、通信社の要請を受けて日本全国の原風景を訪ねえ描いた絵とエッセイをまとめている本です。上質紙で製本されて、絵がキレイに印刷されているので、絵を眺めるだけでも素敵です。島根県の回は、今は既に絶えてしまった矢田…

へるん幻視行(宇治谷順原作、ほんまりう作画)

ラフカディオ・ハーンが松江にやってきて、怪談を書いたのかを、マンガで描いたものです。ハーンは明治に日本にやってきて、その日本という国は、それまでの日本的な社会から、近代の到来によって価値観や、人々の習慣などが大きく変化した時代ですね。ハー…

出雲のことば 早わかり辞典(牧野辰雄編)

著者は平田で長年お医者さんを務めた方。出雲弁のメッカに育ったが、孫がテレビの影響からか、いわゆる標準語を話すようになり、自分の言葉が通じなくなっていることに愕然とし、文化財ともいえる出雲弁を残さねばならぬと、固い決意のもとに編さんされたそ…

隠岐は絵の島 歌の島(大西正矩、大西智恵、大西俊輝共著)

隠岐を愛した父の思いを受けた、3人の子どもによる共著で、隠岐の島をうたった短歌や小唄などを集めて、隠岐の豊かさを表現した本です。素敵な試みで、大変面白い本ですね。例えば、隠岐に渡る後鳥羽上皇、隠岐に旅した与謝野鉄幹と与謝野晶子の夫妻、田山…

14歳からの仕事術

松江市出身で、東大教授(労働経済学)として、数々の研究や著述活動を通じて、労働問題研究の最先端を走るこの人も、島根が生んだ頭脳ですね。ニートという言葉を日本で最初に使い始めた人で、働けない若者たちの現状をあぶりだし、社会に大きなインパクト…

源五郎のいずも風土記(橋谷博著)

島根大理学部(当時)教授だった著者が、宍道湖・中海の研究などを通じて感じたことをつづった、毎日新聞の連載をまとめたものです。源五郎というのは、いつも宍道湖・中海を潜水していることから、つけられたあだ名です。それほど、いつもウエットスーツに…

酒学事始(「酒学事始」編集委員会編)

島根県工業技術センターのお酒博士として知られている堀江修二さんを中心に、島根県の酒の伝統を網羅しようという、業界を挙げてつくった本ですね。発行された1990年代は、等級制が廃止されて、お酒の世界も変革を迫られていた時期です。そのとき、島根…

八雲の伯耆・因幡の旅(横山幸子著)

1990年頃に、八雲の来日100周年を記念した事業で、「小泉八雲市民文化賞」という、八雲に関する市民からの論考などを募集しました。その作品を集めて、「松江市民文庫」として発刊したようです。ですから、著者はアマチュアの方です。ただ、これが、…

新編古事記物語(鈴木三重吉著)

広島市生まれの作家、鈴木三重吉が、古事記を分かりやすい文章にして、大正8年に童話雑誌「赤い鳥」に発表した歴史童話です。古事記と言えば、出雲神話も多く、スサノオなども登場します。古事記の世界を感じるならばこの本から入門してみるのもよいと思い…

イノシシを獲る〜ワナのかけ方から肉の販売まで

イノシシの害に悩んでいた島根県美郷町で、イノシシを獲って、肉をおいしく加工して販売しようという一石二鳥の転換がいかに起きたかということを紹介された上で、具体的な狩猟の方法や肉の加工方法などが紹介されています。冒頭には美郷町からの報告も載っ…

観て歩き 石州の文化財(小寺雅夫著)

石見の文化財を丁寧に取材した、すばらしいアーカイブです。著者は、元国鉄マンで、旅の本や小説などを書かれている、浜田在住の方だそうです。石見は、[石を見る」というくらいですから、石ばっかり。神社の元宮も岩なら、石垣の棚田もあります。石だらけ、…

永井隆の生涯(片岡弥吉著)

キリシタン史などを研究する著者が、島根県雲南市三刀屋町生まれの永井博士の生涯を丹念に描いた労作です。被ばくして病床にありながら、自分の体の変化などを含めて、原爆の悲惨さや平和の尊さを訴え続けた博士の偉業を、島根県民はみんなで受け継いでいか…

私の青春文学紀行(松本侑子著)

出雲市出身の作家・翻訳家の松本侑子さんによる文学紀行です。赤毛のアンの漢訳で話題を集めた松本さんが、赤毛のアンの舞台となるカナダのプリンスエドワード島、風と共に去りぬのアトランタ、ハイジのスイスなど、小説の舞台となった場所を訪ねたエッセイ…

新・古代出雲史(関和彦著、写真・久田博幸)

古代出雲について、出雲国風土記からアプローチして、新しい古代出雲像をあぶりだそうという試みの書です。また、写真がyくて、出雲大社など和夫億の神社や斐伊川などの風景をきりとっています。(2001年、藤原書店)

島根の童話(日本児童文学者協会編)

島根県に縁のある作家が、島根を舞台に描いた童話作品を集めたもので、全国の都道府県別にまとめた本です。島根はいつも32巻ですね。作者は、大田市出身の直木賞作家・難波利三さん、江津市在住の村尾靖子さんのほか、ズッコケ3人組シリーズでおなじみの…

松江(文・速水保孝、藤岡大拙、長野忠、写真・岡田憲佳)

速水さんは「出雲の迷信」で有名な、島根県立図書館長。当時、速水さんが、郷土資料などを図書館が自ら発行しようと取り組んだのが島根郷土資料刊行会です。高校教諭だった藤岡大拙さんが、図書館に勤めはじめて、速水館長の下でこの発行を手伝ったそうです…

芋代官(田中通著)

「芋代官」とは、大森天領で今も敬愛を集める、代官井戸平左衛門のこと。田んぼが少なく、山ばかりの石見地方では、江戸時代も飢饉が起きていました。江戸から派遣された代官の平左衛門が、飢饉から人々を救うために、芋を植え、育て、領民を救ったのですね…

日本農業の正しい絶望法(神戸善久著)

著者は名前から予想されるとおり、島根県出身の方で、松江市生まれです。京大卒、現在は、明治学院大学教授です。農業について、従来の考えとは違う、「正しい」分析をなさっている方で、農業論として、すごくまともだと思います。TPPなど、農業を取り巻…

イタリアの図書館(宍道勉著)

著者は松江市在住の図書館人で、雑賀町にある私設図書館・曽田文庫応援団の理事長さんです。イタリアに何度も足を運び、イタリアにある公共図書館の様子を伝えています。日本の図書館は、なんでかしらないけど、敷居が高くて「行政の施設」という感じが抜け…

島の人、島の風(日本離島センター編)

本土で生まれ育った者にとって、離島というのは、なんだか不安定で、台風が来たら帰れなくなる場所っていうイメージですが、一方で、ある種の楽園性があって、文化の最先端だったりもします。竹島や尖閣列島も、日本の領土というけれど、中国や韓国も我が島…

恋と裏切りの山陰本線(西村京太郎著)

西村京太郎さんのと津川警部が、奇妙な電話を受けて、ブルートレイン「出雲3号」に飛び乗って、皆生温泉へ……。出雲3号、もう、姿が見られなくなったブルートレインが懐かしいです。西村作品は、鉄道文化を次世代につなぐ重要な役割を果たしているのです。…

「出雲」からたどる古代日本(瀧音能之著)

出雲神話は、古事記や日本書紀にものすごく多く登場します。それは、今の天皇を中心とする大和国が成立する前の出来事を神話化したのだろうと言われています。だから、出雲の国は、すごく重要な役割を果たしていたのだろうけれど、文字通り雲をつかむような…

人形の旅立ち(長谷川摂子著、画・金井田英津子)

平田出身の童話作家の長谷川摂子さんが描く、古里の平田を舞台にした5編のファンタジーです。坪田譲治文学賞を受賞しました。著者の実家は、一畑鉄道を経営する大谷家 で、その家での生活がベースになった、幼い日の体験がもとになっているのでしょうか。素…

一戔五厘の旗(花森安治著)

旧制松江中学で学生時代を送り、東京帝大を出て、大政翼賛会で働いた花森安治。戦争への強い反省から、暮らしの中から反戦を訴える気持ちで、「暮しの手帖」の創刊に加わります。その、花森の苦悩と反省と、反戦への強い覚悟が現れた、私のバイブルとも言う…

花森安治 美しい「暮し」の創始者

雑誌「暮しの手帖」の編集長として活躍した花森安治のことを、いろんなかかわりのある人が紹介しているムックです。花森安治は、旧制松江高校(現島根大学)の出身ですので島根のゆかりの人と言う事で、島根本に含めます。この本には、出雲市出身のライター…

探訪ブックス「日本の城」6山陰の城(小学館の城郭シリーズ)

いま、結構な勢いで城ブームが来ているそうですね。そして、熊本地震で熊本城が壊れたときに熊本市民が抱いたであろう、何か支柱が壊れたような感慨が想像できて胸が痛みました。城は、戦争を象徴する人間の醜さの表れだと思います。何を守ろうとしたのか、…

森鷗外 文化の翻訳者(長島要一著)

津和野町出身で、日本の文豪として、燦然と輝く功績を残した森鷗外。優れた文学差品を残した「作家」としての顔に加えて、森鷗外は「翻訳者」としても膨大な仕事をしています。この本で著者は、鷗外が単なる翻訳者ではなく、西欧と日本の両方の文化を理解し…

鉄のまほろば(山陰中央新報社)

山陰中央新報が2015年〜16年にかけて週1回連載した企画を本にまとめたものです。5月末に発売になりました。島根県は鉄の王国でした。江戸末期から明治の初めには、中国山地が日本国内の鉄の9割を生産していたという記録もあります。広島の鉄の生産…

出雲神話の誕生(鳥越憲三郎著)

出雲の研究は、進んでいるようで進んでいない、分かっているようで分かっていない、そして、なんかねじ曲げられているように感じる人が多いようです。この本も、出雲神話の誕生の経緯に着目し、それが、大和朝廷に対する出雲の国の人々がどのように扱われた…

<出雲>という思想(原武史著)

スサノオやオオクニヌシを祭神としてきた出雲。古代の物語として語られてきた出雲だが、実は明治時代にもう一度、すごい脚光を浴びた、というか、活躍した時期があるそうです。明治政府が、アマテラスを中心とした伊勢を重視したのに対して、千家尊福を中心…