島根民謡風土記(安部勝著)


山陰中央新報社が昭和50年代にシリーズとして発行した「ふるさと文庫」の11番目にあたる本です。著者は元国語教員で、隠岐に長らく赴任されたようでして、隠岐に関する著作があります。

島根民謡風土記は、約60の島根の民謡について、歌詞などもふくめて書かれていて、その歌はどこから来て、どこに定着したのかが、地域別の特徴を踏まえて紹介されています。多くの民謡は、峠(くにざかい)を越えて、向こう側とも共有されるので、例えば石見は広島県北部の安芸地方、奥出雲は伯耆とのつながりが深く、曲調や歌詞などに類似点があるとのこと。「元唄」が峠を越えて行き来していたというのも面白いですね。

津和野踊り唄、というのがあって、これは森鷗外の小説「ヰタ・セクスアリス」にも紹介されています。あとは、石見の田植え歌は、厳しい仕事を歌を歌いながら皆で息を合わせてすると腰の痛さも忘れるということなのでしょうか。この田植え歌の分布や伝播のようすを紹介しています。

山陰中央新報社、1981年)