「よみがえる弥生」ドキュメント田和山遺跡訴訟(高野孝治


松江市乃白町に立っている松江市立病院の建物の前に、田和山遺跡はあります。この遺跡が発掘されつつあったときに、灘町の市立病院をこの場所に移転しようと松江市が決定しました。その後、この遺跡は三重の環濠集落で、弥生時代の出雲の様子をよく伝えた非常に価値のある遺跡だということが分かりました。

病院と遺跡。松江市の世論がふたつに割れて、大論争が行われ、途中では裁判が行われました。いったんは記録保存して環濠集落は失われることが決まりかけましたが、住民の反対運動がますます盛り上がり、最終的には病院の立地と遺跡の保存が両立する解決をみることになります。裁判に携わった弁護士が一連の経緯を書いた本です。この経緯は松江市の行政史としても非常に貴重な記録だと思います。市民と行政の関係について考えさせられます。

(松江今井書店、2001年)