のんびり山陰線で行こう(野村正樹著)


著者は、推理小説作家であり、鉄道ファンでもある方です。この方が、山陰線を旅して、人生にほっと一息をつくという趣向です。旅をしながら、のんびりでもいいんじゃないのって、ことを山陰の鉄道旅で感じていきます。

確かに、山陰の鉄道は、急ぎません。そして、急いでも始まりません。ゆっくりと、着実に、少しずつ、走ります。廃止された大社線だって、立派な駅舎が残っていて、こういうものをずっと大切にしています。鉄道は山陰という地になじみ、あたかも、土地の空気を吸って、山陰の鉄道になっていきます。車窓から見る日本海のダークブルー、江の川沿いを走る三江線は川と山と暮らしの織りなす雰囲気がすばらしく、木次線は奥出雲の懐の深い山の緑が目に焼き付きます。

人生に重ね合わせることに少し固執した感もありますが、肩の力を抜くことの大切さを教えてくれます。山陰の鉄道旅の友にどうぞ。

(2008年、東洋経済新報社