松江歴史余話(乾隆明著)


著者は家業のお肉屋さんをしておられる傍らで、歴史にも造詣が深く、この本によると家業をきちんと黒字のまま精算されて、歴史研究に没頭されたそうです。今は、刊行が続いている松江市史編さんに携わっておられます。

この松江歴史余話は、「松江藩の時代」という歴史の骨格を為すような著書では書ききれなかったのでしょうか、こぼれ話が満載で、でも、こうした庶民の暮らしや特に経済の話が出てきます、そういう話の方がリアリティがあって、面白いです。ヘルンさんが来た頃の松江の城下町が、食い詰めた元武士階級が仕事もなく苦しんでいたことなどが紹介されていますが、ヘルンの奥さんの小泉セツさんは、元武士の家柄。でも苦しくて、家族がヘルンさんについて行ったりしますよね。そういう背景が分かると、松江の歴史も深みがましますね。

(今井出版、2011年)