森鷗外百話(苦木虎雄著)


 津和野町に生まれた森鷗外の人生を、順に追った100話完結の文章で、山陰中央新報に連載されたものを、同社の「ふるさと文庫」シリーズとしてまとめて出版された本です。

 森鷗外の研究をするひとはむちゃくちゃ多いですが、地元でもその魅力から、研究対象とされる方が多いですね。著者は、小中学校で校長などを勤める傍ら、森鴎外を中心に研究を続けてきた市井の研究家です。あまたの研究家が鴎外のことは「書き尽くされている」と謙虚ですが、なかなかどうして、鴎外の津和野を後にするまでの幼少時代のエピソードを満載してあり、面白く読めます。また、著者は若いときに斎藤茂吉氏と面識があり、鴎外を敬愛した茂吉の話も盛り込まれていて、楽しく読みました。鴎外の基盤が津和野で育った幼少時代にあり、先輩格となる西周との出会いで、大きく飛躍していく様子がよく分かります。

 今もブックオフなどで、簡単に見つかりますが、たいてい108円で売ってます。鴎外の人生を知る入門書としてもいいなあと思いました。

山陰中央新報社、1980年)