石見の文学(山崎克彦著)


 数々の石見の文芸活動について著作を持つ山崎克彦氏が、石見出身の文学者について、エッセイ風にまとめた本です。冊子のような体裁ですが、中身は濃いです。

 まず、石見の三大文学者として、「森鷗外島村抱月、中村吉蔵」の3人を挙げて、この3人が交流があったか、などの論考をしているのですが、こういう人たちに対する知識が半端ではない。ただ者ではない著者の知識が続きます。ちなみに中村吉蔵は明治時代の劇作家です。

 それに、前編に渡って石見愛があふれています。出雲には直木賞作家はいないが、石見には、直木賞作家の難波利三がいて、芥川賞候補は田畑修一郎、伊藤佐喜雄、直木賞候補も三浦浩がいる、と。

 その石見の文学の土台は、柿本人麻呂から続くという持論も気持ちよかったです。

 (1994年)