山中鹿之介(松本清張著)


 小学館の「P+D BOOKS」というレーベルがあります。Dは電子書籍で、Pは紙の本ということだそうです。この本は、その「P」の方です。

 この松本清張作の山中鹿之介は、1957年の小学館が発行した「中学生の友3年」〜「高校進学」に一年間連載された小説とのことです。忠君愛国が国是だった戦前はもてはやされた山中鹿之助ですが、戦後もこうして人気をあつめたんでしょうか。

 山中鹿之助は、島根県安来氏広瀬町の月山富田に城を構えた戦国武将尼子氏に使えた武士です。父親を早く亡くし、家督を継ぐことができず、母親とともに山中で臥薪嘗胆の日々を送ります。子供時代には山で遊ぶ腕白坊主として育ち、鹿とばかり遊んでいた。元服するときに、鹿之助を名付けられ、武士としてスタートを切ります。その後の活躍は知られているとおりです。中国地方の毛利、大内、尼子の戦いは、本当に激しく、ダマし合い、知恵比べ。その中で、尼子一筋に生きた鹿之助は、忠君の武士として日本人の心に響くのでしょう。戦前に偶像が祭り上げられ、戦争と結びつけられたのはかわいそうですが、島根が生んだヒーローの一人ですね。

小学館、2015年)