話術(徳川夢声著)


益田市生まれの弁士、徳川夢声(1894年4月13日 - 1971年8月1日)が、どうやったらうまく話せるかについて、記した話術の指南書というべき本です。この本、版を幾度も重ねるいわば隠れたベストセラーとなっているようです。

話術の天才である徳川夢声は、書き出しからいかしていて、自分を含めて話し方に就いての研究を怠ってきたのは、話というのは誰でもできることでそれをあえて研究するのはいかがかと、人を食ったような論が展開されます。しかし、だんだん話はまじめになり、ふかくなっていきます。例えば話のうまさは「間」であると言います。話をするのは「意思を伝える」「感情を伝える」「知識を伝える」の三つに分類できるとか。

あるいは、「演説心得6ケ条」というのもあります。
第一条 自分がいわんとすることを、心の中に順序よく積み重ねておく
第二条 聴衆の状態によって、言語態度など変通自在に加減する
第三条 場所の状況に如何によって、臨機応変たること
第四条 自分性来の声、すなわち地声をよく鍛錬すること
第五条 会場の広狭、聴衆の多少によって、声の調節を図ること
第六条 聴かせるのが半分、見せるのが半分と心がけること


深い。この各条項について、4〜5ページもすらすらと書かれていて、今でもためになるお話ばかりです。

ちなみに顔はこんな感じ。本の中にある著者近影を拝借しました。素敵なおじさまですね。

白揚社、1949年発行、1965年第三版9刷)