出雲国大社観光史(大社史話会著)


出雲大社の観光の歴史をまとめた本です。観光史というめずらしいジャンルですが、大社はまさに出雲大社門前町として、観光を糧に生きてきた町だと言うことがよく分かります。

例えば、富くじ。大社の門前で、江戸時代に富くじが行われていました。富くじを買えるのは、大社以外からやってきた観光客で、宿に宿泊した証明書がなければ買えなかったそうです。富くじが行われるのは、大きな祭りから数日後。つまり、参拝した人が、大社の宿屋に数日間泊まらなければ、くじが買えないという仕組みになっているのです。あこぎと言えばあこぎですが、これも観光を糧とする大社のなせるわざでしょう。

明治になって富くじが禁止されると、歌舞伎が楽しめた阿国座、糸操り人形など、客を楽しませる興業が続いていました。

遷宮で賑わったのは出雲大社の力ばかりではなく、こうした何百年も門前町を支えてきた商売人たちの力があるのだなあと思うのでした。

(2014年)