聞き書島根の食事(日本の食生活全集32、編集委員会代表・島田成矩)


この本は、全国の農村、漁村、山村に残る、伝統の食をのこそうという狙いで全国の都道府県ごとにまとめられた、聞き書きの食事の本です。写真も結構古くて、昭和の時代までしっかり残っていた食文化は急速に失われています。そういう文化を一緒に味わえる本で、ぱらぱら見るだけで古里の生活史をたどることができます。

それにしても同じ島根県といっても、これだけ東西に長いと、食べる物も料理の方法も保存も、かなり違いますね。平野部の多い出雲では、宍道湖の幸がありますし、低湿地で採れるせりなど、独特の食べ物があります。また、江の川沿いでは、川の恵みの鮎やハヤに、川沿いで採れる山菜を組み合わせています。

行事ごとに出されるごちそうも違いますね。お雑煮は結構違って、江の川沿いはハマグリの吸い物、出雲平野ではすましに岩のり、石見の津和野ではカブを入れるそうです。

今は古いものが逆に新しい時代です。こんな本をよみながら、古里のことを思い起こしてみるのもいいかもしれません。
(1991年、農村漁村文化協会)