島根の詩人たち(田村のり子著)


島根県内の詩壇というものについて、認識がなかったのが、恥ずかしいくらい、島根の詩人たちの生き生きとした姿が、この本には描かれています。

大社町の旧制杵築中学校の生徒たちが、ガリ版刷りで印刷した詩の同人誌「平原」が編まれたのが大正七年という。著者は、「出雲石見地方詩史五十年」で、日本詩人クラブ賞を受賞したそうで、地方の詩研究の本が、日本全体の賞をもらうのは、空前絶後とのこと。島根の詩壇について、調べに調べたその深みは、この本の57編に及ぶ文章に凝縮されています。地方の詩壇と言えば、サークル的な活動家と思いきや、すさまじいほどの蓄積と日々の挑戦があることが分かります。戦前戦後の島根の詩を読み解くことで、地方や日本の社会を島根の人々がどのような視点で見ていたかも浮かび上がってきます。

(1998年、島根詩人連合)