渾身(川上健一著)


はっきり言って、これは泣けます。最初にこの小説を読んだときには、ほぼ後半半分はずっと泣きっぱなしでした。島根県に縁のある人には必読の小説と言えるでしょう。島根県ということを除いても、結構本を読んで泣いてきた湖鹿堂にとっても、三大泣ける小説の一つです!

舞台は島根県隠岐の島町。古くから行われる古典相撲をめぐるお話です。古典相撲は地域をあげた伝統行事で、その地域代表に選ばれた主人公は、懸命に練習に励み、大一番に臨みます。自分の子供と再婚した妻との絆が、この相撲を通して深まっていきます。男は背中で態度を示すのです。読みながら、何度も泣けるのは、地域を背負う責任感と、この相撲にかける家族への愛情が深く交わり、土俵上の一挙手一投足に込められているからだと思います。たった一晩だけ、島が一つになる古典相撲の魅力をたっぷり味わえます。

この本は、島根県出雲市出身の映画監督、錦織良成さんによって映画化されました。この映画を見たポーランドの男性が、相撲に感動し、ポーランドで相撲の普及に励んでいるということをテレビ番組でやっていました。感動がヨーロッパまで伝わったなんてすごいですね〜。

集英社文庫