島根の地名辞典―あなたのまちの地名考(白石 昭臣著)


 「六十の逆落とし」 津和野町直地の東端に、青野山麓に連なる奥山にある地名。周辺に人家はなく、昔、六十歳になったら老人を捨てたところと伝え、地名はこれに由来すると言われている。

 このような話は、日本中いくらでもあるのでしょうが、すごく具体的で、リアルさがまします。

 「弥五郎滝」 邑智郡石見町矢上にある滝の名前。カネ(鉄)二束を背負い、一本歯の下駄でこの滝を上がったらその鉄を与えると言われた大男の弥五郎は、もう少しのところまで行くが、失敗し、この滝に落ちてしまったので、そこから名がついたと伝えられている。大人弥五郎伝説という南九州に見られる巨人伝説の系統に入るもので、ここでは巨人の失敗談となっている。

 中国山地たたら製鉄のメッカ。至る所に鉄にまつわる伝説が残っていて、地名にも、赤(鉄のさびの色)がついたり、福(たたらを吹くということころから)などの字がつくところはたいてい、たたら製鉄が行われていたところだそうですな。

 「阿宮」出雲市斐川町の大字で、仏教山の南麓、斐伊川の右岸にある地区で、出雲国風土記に「阿具社」の記載があることから、古くから人々の居住が認められる。あぐは、水野沸き立つような状態からきたもので、斐伊川との関係の深さが推測される。

 出雲の地名は、出雲の国風土記という強い味方があるので、昔からのつながりがよく分かります。だいたい、神さまに繋がっていたり、スサノオなど出雲神話にちなんだものも多いですね〜


という具合に、島根県の珍しい地名をランダムに取り上げています。全部の地名ではなく、おもしろそうなところを選りすぐっているので、全部、「へえ」というかんじですね。

(ワン・ライン、2001年)