ゆるゆると。〜まつえで暮らす〜(すやまひろこ著)


松江城のそばの北堀町の古民家で、手作り雑貨の店「ちろり」を開いておられる、すやまひろこさんが、松江の素敵な場所や過ごし方について、リポートしてまとめた本です。そんじょそこらのガイド本と違って、松江のしっとりした風情のある場所や、手作りでこつこつものを造り続けておられる人、松江で素敵に暮らす人たちが、ゆるゆると、した文章でつづられています。基本的にこれはすやまさんの「お気に入りの場所」だったり、「好きな人」を訪ねる小さなトリップなのかなあと思います。

 本の最初に、すやまさんの生き方から出てくる言葉であろう、「大切にしている10のこと」が書かれています。たとえば、「お年寄りの言葉に耳を傾ける」「旬を食べる」「自分の物差しではかる」「からっぽにする」「捨てる拾う」など、柔らかい言葉ですけど、すっきり一本芯が通っていて、気持ちのいい言葉です。このコンセプトに沿って選んだお店やスポットは、本当に小さくて、素敵で、品が良くて、簡素で、あったかいのです。中屋万年筆店、(天神町)とか、梶勧農園(竪町)とか、アルトスブックストア(南田町)とか。う〜ん、いいですよね〜。

 古いものを大切にしているというすやまさんのコレクションも楽しいですね。錫のちろりとか、かっこいいやかんやおたまなど。今でこそ、若い人たちが、すこし古いものを楽しんで使っていることも増えてきましたが、すやまさんの感性は、古いものを大事にすることが、新しい喜びを生むことを教えてくれます。

 すやまさんのお店も、すごく素敵で、いつも身に着けていたり、日常で使いたいものがそろっています。http://www.kaelu.com/piro/contents.html

 (ワン・ライン、2009年)