民藝の教科書1うつわ(久野恵一監修、荻原健太郎著)


 島根県は民藝の聖地なのではないでしょうか。ちょっと大げさかもしれませんが、この「民藝の教科書 うつわ」を読んでいると、そんな気分にさせられます。

 民芸運動は、柳宗悦浜田庄司河井寛次郎を中心に展開しました。生活に根ざした器の中にこそ美しさが宿るという「用の美」を唱えました。特に安来市出身の河井寛次郎が、島根県内の窯に大きな影響を与えたとされ、良い窯がいまでもそろっています。
 
 この本では、布志名焼(松江市玉湯町)、出西窯(出雲市斐川町)、石見からは、石州宮内窯、石州嶋田窯、森山窯などが紹介されています。森山窯の森山雅夫さんは、河井寛次郎の最晩年の弟子で、河井から直接指導を受けた人です。ここに民芸の伝承があります。森山窯、言ってみたい!また、石見は、はんどうと呼ばれた大きな甕の産地として有名でした。石州瓦と同じ、来待石の釉薬を使い、赤いはんどうが日本海側の農家の軒先などでよく見られますね。この名残をくむ石州の窯にも面白いものがありますね!

良い土があって、慎ましい生活があって、こつこつと手仕事に励む人がいる。島根の特製がもっとも現れているのが、民芸の世界なのかなとも思います。

 (2012年、グラフィック社)