小泉八雲の妻(長谷川洋二著)


小泉セツは、元松江藩の士族の娘。ただ、明治時代は士族は落ちぶれ、仕事もなかなかうまくいかず、没落する家が続出した。小泉家も厳しい経済事情だったようで、この本によると、「ガイジン」である八雲の世話をやく女中のような存在としてハーンのそばではたらくことになったそうです。そういう、武士階級の娘と外国人との組み合わせには、なかなか表現しにくい、複雑な立場があったようですね。

でも、2人だけで出掛けた旅の様子や、その後も、セツとともに歩んだ八雲の人生を振り返るとき、セツの偉大さがよくわかります。八雲に日本的精神の多くを伝えたセツの存在がなくては、八雲は八雲たり得なかったようにも思いました。

(松江今井書店、1988年)