胸の小箱(浜田真理子著)


 松江を拠点にしながら、全国に活動の輪を広げている歌手の浜田真理子さんが、歌うたいとして生きていくことを決めた半生をつづったエッセイです。子供時に、スナックを経営する親と妹たちとの間に挟まれて、寂しいと言えずに我慢し続けた日々、歌唄いとして独り立ちしていき、次第に自分の世界を作り上げていく様子、そして、歌作りの現場での苦悩など、心の内をけっこう大胆にさらけ出しておられます。真理子さんの歌の背景にある、ふかいふかい思索とゆたかな人生経験がよくわかり、このほんを読んでから歌を聴くと、たんに恋のお話というだけではない、真理子さんのうたの神髄が少しだけですけど理解できる気がするのでした。
 
 あと、but beautifulにある曲で、全然ドラムの拍子が違っている曲があって、なんだか印象に残っていたのですが、真理子さんも録音の時に困ったという話があって、またその歌を聞き返すと、少しおかしくなって、すこしくらい印象だった曲がよりふかく感じられて、うれしくなるのでした。

 この本は、BOOK在月実行委員会が2014年に始めた初代の「島根本大賞」に選ばれた作品です!

 (本の雑誌社、2014年)