出雲・石見(田畑修一郎著)

 
著者は益田市出身の作家で、戦前、芥川賞候補にもなりました。若くして亡くなったのが残念ですが、郷土の作家として、もう少し名が売れても良いかなと思います。

 出雲・石見は、安来から郷里の益田まで海岸線にそって、じっくりと1ヶ月かけて旅したエッセイです。これがなんとも味わい深く、島根県の風土や精神性をここまで、鋭く、でも、視線はあくまで優しく、描いた人はいないのではないかと思います。
 
 そして、石見出身者からみると、出雲人というのは、豊かな地域で、広い平野があり、なだらかな海岸線があり、うらやましい限りで、その豊かな文化があり、石見は石見で、岩と山ばかりで生活するにはつらいところですが、そこから進取の気性がうまれ、さまざまな人物を輩出しています。そんな出雲と石見の精神性を、風土と絡めて論じています。

 この本は戦前に書かれたものを、ハーベスト出版が復刻したものです。島根の多くの人に読んでもらいたい本です。いまも、絶賛発売中ですので、ぜひ、てにとってもらえればと思います!

 (復刻版2004年、ハーベスト出版)