ラフカディオ・ハーン(牧野洋子著)


ラフカディオ・ハーン小泉八雲)はなぜ、一つ所にとどまらずに旅に生き続けたのか、小泉八雲の生涯を知りたい人にとっての入門書として手軽に読める本です。

ハーンはイギリス系アイルランド人の父、ギリシア人の母の元に生まれました。

二人は離婚し、母とも離れて暮らさざるを得ませんでした。その後、アメリカに渡って苦労を重ねて記者や紀行作家として地歩を築いたことや、日本に渡ってから横浜、松江、熊本、神戸、東京で教師や記者、大学教授として過ごした日々は、まさに流浪の人生と言っても過言ではありません。

日本へ渡ろうとしたきっかけとなったのが、古事記の英訳だったハーンは、吸い寄せられるように松江に来ます。松江での日々は、後に日本文化や日本人の精神性についてのさまざまな優れた著作を残したハーンの思いがどこにあったのかが描かれます。ハーンの研究書は数多くありますが、ハーンの人生を概観し、その行動や作品のベースにあった、父と母の存在、日本との出合いなど、ハーンの行動様式の原点についての考察があり、新書版といえどもしっかりした読み物になっていて、優れた入門書になっています。

中公新書、1992年)