ジャパングラフ 島根


 この本をみたとき、ああ、やられたな、と思ったものです。「くらしの中にある47の日本」。キャッチコピーもいい。そのなかで、5番目に島根を選ぶセンスがまたいい。ちなみに、1〜4は、滋賀県岩手県愛媛県群馬県。うん、いい。

 登場人物が、また、いい。出雲学研究所の藤岡大拙さん、木次乳業の佐藤忠吉さん、日刀保たたらの木原明村下、doorの高橋香苗さんなど、島根の風土を語るにはこの人たちをおいていない人たち。

 大田の五十猛の海で暮らす人たち、隠岐の牛付き、津和野の商店街、大土地神楽など、島根の伝統的なくらしを、何気ない風景を、そこにいる人の表情をしっかりとらえ、島根の素朴な良さを伝えてくれます。まるで、「島根は、そのままでいいんだよ」といってくれているような優しさが立ち上がってきます。言い換えれば「東京にはない、島根だからいいんでしょ。それが分からないの?」という問いを投げかけてくれているようでもあります。

発行資金をクラウドファンディングで集めたとのこと。出版の形もいろいろと進化しています。これを、島根の市町村でやらねばなんねえです。

(2014年、七雲、1200円+税)