松江食べ物語(荒木英之著)


1993年に271回にわたり、山陰中央新報に連載された企画「松江食べ物語」をまとめた本で、箱入りで「春夏」「秋冬」という2冊セットで3000円!いまも人気の本で、松江市内の古本屋では5000円で売っていたりします!

人気の秘密は、いまは失われつつある、松江の豊かな食文化をここまで国名に記録し、しかも、すぐれたエッセイであるからです。例えばシラウオの話。東本町5丁目の振り売りのおばさんたちが、「フはえらんかねー」と売り歩く様が描かれている。「フ」はシラウオのこと。「フ」は、出雲弁では「ヒ」で、「氷」を意味する言葉という。氷のように透明なのが新鮮で、時間がたつと白濁するので、「氷」のようなシラウオをこう読んだという。何という風情、何という豊かさ。

著者は、土産物を製造販売する「山海」の創業者。こうした知識は、古老たちとの交流から蓄積されたという。粋な商売人であり、文化人であったのだろう。

山陰中央新報社、1994年